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ディープ・エコロジーとは

「ディープ・エコロジー」は、1972年、ノルウェーの哲学者アルネ・ネスによって提唱される。(1972年、ストックホルムで開かれた国連人間環境会議の年) 1973年に発表した論文「シャロウエコロジーとディープエコロジー」において、これらの考え方を 1970年代以降の世界的なエコロジー運動の文脈のなかで再定立し、近代批判として明確に位置付けた。

浅いエコロジー運動(shallow ecology movement)「第一に汚染と資源枯渇に反対する」「その主要目標は、先進諸国に住む人々の健康と繁栄」 国際政治問題としての「地球環境問題」 とは、現在の先進諸国が享受している生活レベル・体制思想・社会制度などに深い変更を加えないことを前提としたうえで、環境問題 を解決しようという議論枠組みである。

Arne-Naess

そして「持続可能な発展」の概念が示すように、そのパースペクティヴに捉えられているの は「将来世代の人間」をも含めたうえでの「人類」とその 「生息環境」であり、人間以外の生命体や自然それ自体の「内在的価値」 は 基本的には考慮されていない。

深いエコロジー運動(deep ecology movement)現在の地球環境問題は、近代以降、人間が自然に対して誤った態度を取ってきたことに由来する。自然とは、近代人が考えてきたような「征服すべき対象」ではない。人間と自然とはそもそも一体である。

自然のなかで、自然に支えられて生きる人間という、正しい世 界観をわれわれが再発見することなしに、環境問題はけっして解決しない。 ディープエコロジーの思想家たちは、現在の社会と文明のあり方を前提としたうえでの環境保護運動を否定する。

現在の地球規模の環 境問題は、ほかならぬ現在の形の社会システムと文明が生みだしたのであるから、それを根本的に解決するためには、現在の社会システムと文明それ自体を変革することがどうしても必要となる。そのためには、まず現代社会に住むわれわれひとりひとりが自らの「世界観」や「価値観」を改め、意識変革を行わなければならない。

まず自己の探求や暝想などによって、誤った近代的世界観を捨て去り、その代わりに、有機的な生命世界のなかに織り込まれて存立している真の自己のあり方に目覚め、そして生活をエコロジカルなものに改め、調和のとれた世界を実現してゆくための直接行動に立ち上がろう、というのがディープ・エコロジーの考え方である。



ディープ・エコロジーの7つの特性

アルネ・ネスは、「シャロウ・エコロジー運動と長期的視野に立ったディープ・エコロジー運動」The Shallow and the Deep, Long-RangeEcological Movement, 1973)において、彼の主唱するディープ・エコロジーの7つの特性をあげている。以下、その要点である。
  • 環境のなかに個々の独立した人間が存在しているというような原子論的な見方ではなく、世界というものを、網の目のごとく、相互  に連関した個々の要素の連続体として関係論的に、また全体論的にとらえようとする。
  • 人間中心主義ではなく、生命圏平等主義(biospherical egalitarianism)の立場をとる。
 
  • 生命の多様性(diversity)と共生(symbiosis)をもとめる。
 
  • 平等主義という原則から反階級制度の姿勢(anti-class posture)を貫く。
    南北間の経済格差の問題をも含めた人間社会における一 切の差別や抑圧に反対する。(この点では、ソーシャル・エコロジーとも共闘できる。)
 
  • 環境汚染や資源枯渇に対する闘いを支持する。この点では、シャロウ・エコロジーとも協力できる。
 
  • 混乱(complication)とは区別された意味での複雑性(complexity)を重要視する。
    これは人間社会における断片化され単純化された労働よりも、人間が全人格を傾けて能動的に協同できるような分業を支持することにつながる。
 
  • 地方自治と分権化を支持する。この点で、エコ・リージョナリズムとも提携することができる。
 

ディープ・エコロジーの2つの究極目標

1.自己実現

自己実現とは、近代的な自我の確立を意味するのではない。それは、人間と人間以外の世界を含んだ有機的全体であるところの「大きな自己」のなかで、それとの関連性において(小さな私の)自己を成熟させてゆくことである。

ネスの提唱する「自己実現」の意味は,自己と環境との境界設定について,「狭く限定的な自己」を「有機的な生命世界のなかに織り込まれて存在している 自己」に成熟させること。

2.生命中心的平等

生命中心主義的平等とは、すべての生命体がおのおの自己実現をする平等の権利をもつことを意味している。すべてが繋がり合った生命圏のなかで、他の生命体を傷つけることは、ひいてはわれわれ自身を傷つけることになる。

ディープ・エコロジー運動の「プラットフォーム原則」
  • 地球上における人間と他の生命の幸福と繁栄は、それ自体の価値(本質的な価値、 固有の価値)をもっている。そして、これらの価値は、人間以外の世界が人間の目的にとって有している有用性とは無関係である。
  • 生命の豊かさと多様性はこれらの価値の実現に寄与するし、またそれはそれ自身で価値を有している。人間は不可欠の必要を充足するため以外に、この生命の豊かさや多様性を損なう権利をもっていない。
  • 人間生命と文化の繁栄と、人口の大幅な減少とは矛盾しない。人間以外の生命が繁栄するためには、人間の数が大幅に減少することが必要である。
  • 今日における自然界に対する人間の干渉は行き過ぎており、しかもその状況は急速に悪化している。それだから、経済的、技術的、イデオロギー的な基本構造に影響をおよぼすような政策の変更がなされなければならない。このような変更の結果もたらされる状況は今日とは非常に違ったものになるであろう。
  • イデオロギー的変革は、生活水準の不断の向上への執着を捨て、生活の質を評価すること固有の価値のなかで生きること)がその主たる内容である。「大きいこと」と「偉大であること」の違いが深い次元で自覚されるであろう。
  • 以上の項目に同意する人は、必要な変革を実現するため、直接、間接に努力する義務を負う。
エコロジカルな責任に基づく森林利用の誓約ーエコフォレスターの道
  • 「自然の森林とそこに棲む多種多様の生物が持つエコロジカルな英知(エコソフィ)に敬意を持ち、その尊さを理解し、そこから学びを得る。
  • 森林としての機能が完全に果たされるためにも、森全体のまとまりを守る。
  • 森林に対し樹木を農作物と見なすような手法を用いない。森林に豊かに存在し人間の不可欠の必要を満たすためのもの以外、いかなるものもそこから持ち出さない。
  • 森林から個々の収穫物を持ち出すのは、森林がその機能を完全に果たすことを、その行為により妨げられない場合にかぎる。 疑問の残る場合は、収穫を行わない。
  • 適正で環境に対する影響の小さな技術や手法以外は用いず、人間が森林に与える影響を最小にする。
  • 森林を破壊からまもる際、暴力は用いない。(ガンジーが実践したような非暴力抵抗にかぎる)。
  • よき仕事をなし、「エコフォレスターの道」を聖なる義務そして信頼の証しとして尊守する。
参考文献
  • 「ディープ・エコロジー」アラン・ドレングソン 井上有一 昭和堂 2001年
  • 「世界は恋人 世界はわたし」ジョアンナ・メイシー 筑摩書房 1993年
  • 「野生の実践」ゲリー・スナイダー 山と渓谷社 2000年

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